遺骨の処分に悩む方へ~なるべく負担なく安心して手放せる6つの方法
更新:2025.06.13
「遠い親戚の遺骨を引き取ってしまった」
「お墓を購入する余裕がない」など、やむを得ない事情で遺骨を手放したいと考えている方もいることでしょう。
遺骨はごみとして処分することができないので、適切な供養が必要です。
数ある選択肢の中でも、なるべく安価に、かつ安心して遺骨を手放せる方法を解説します。
目次
遺骨を勝手に「処分」したら違法になる
遺骨は、ごみに出すなどして処分することができません。
刑法第190条の「死体損壊・遺棄罪」にあたる可能性があるためです。刑法190条には、以下のように記されています。
刑法190条
(死体損壊等)
第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の拘禁刑に処する。
このように、死体損壊・遺棄罪は、遺体だけでなく、遺骨を遺棄した場合でも当てはまってしまいます。
よって、「処分」ではなく「供養」しなければなりません。
長らく遺骨の「供養」といえば、先祖代々のお墓に納骨するのが一般的な方法とされてきましたが、最近ではさまざまな供養方法があります。
それらの中から、なるべく費用を抑えて、安心して遺骨を供養できる方法をご案内します。
送骨
「送骨」とは、お寺や霊園に遺骨を送ることです。
遺骨はゆうパックで郵送することができます。
送骨を受け付けているお寺や霊園に、ゆうパックで遺骨を骨壺ごと郵送すると、そのまま永代供養を行ってくれる仕組みです。
永代供養とは、お墓の管理や供養を家族が行わず、お寺や霊園が行ってくれる供養のシステムです。
つまり永代供養を選ぶと、お墓参りやお墓掃除をする必要がありません。
年間使用料もいりません。
送骨の場合、たくさんの遺骨が眠る永代供養墓に、骨壺から遺骨を取り出して納骨することで供養されます。
そして一度お寺に遺骨を送れば、そのままそのお寺に遺骨の供養をお任せできます。
送骨の費用
送骨は、3万円程度から受け付けているところがあります。
送骨の注意点
骨壺から遺骨を取り出して、他の人の遺骨と一緒に合祀(ごうし)されるため、後から個別に遺骨を取り出すことができません。
散骨

散骨とは、遺骨を粉末状にして海や陸へ撒くことです。
以前は違法と思われていましたが、散骨を明確に禁止している法律はなく、散骨を行う人が増えるにつれて徐々に市民権を得てきました。
現在は全国にたくさんの散骨事業者がいて、安心して散骨を任せることができます。
散骨は陸地でも可能ですが、海洋散骨を行っている事業者の方が圧倒的に多いのが特徴です。
他の人の迷惑にならない場所で散骨しなければならず、陸地では散骨に適した場所を探すのが難しいためです。
ただ、「自分名義の山を持っている」など、他の人に迷惑がかからず、かつ自分の所有地であり、条例で散骨が禁止されていない自治体内なら問題なく散骨ができます。
また、他人名義の土地であっても、土地の所有者から許可された場所であれば散骨が可能です。
ただし後でトラブルにならないよう、土地の所有者に散骨を許可した旨を一筆書いてもらうなどしておきましょう。
散骨の費用
事業者に散骨を依頼する場合、依頼主が散骨に立ち会わない委託散骨の相場が1体5万円です。
依頼主が散骨に立ち会う場合、複数の遺族が同じ船に乗る合同散骨で10~15万円、単独で船をチャーターする個別散骨で20~30万円程度です。
自分で散骨を行う場合、もしご自身が所有する山などに散骨を行う場合は、0円から散骨が可能です。
ただし遺骨をパウダー状に粉骨しなければならず、周辺への配慮も必要になるなど金銭面以外での負担が大きいのがデメリットです。
散骨の注意点
散骨するとお墓がないため、手を合わせる場所がなくなります。
他の親族にもその旨をしっかり説明しましょう。
なお、いつ、どこで散骨を行ったかを記載した「散骨証明書」を発行してくれる事業者を選びましょう。
火葬場で遺骨を引き取らない
まだ火葬がされていない段階でのみ、可能な方法です。
一部の火葬場では、火葬の後に遺骨を引き取らないことを選択できます。
遺骨を持ち帰る必要がないため、骨壺もいりません。
骨壺料金の必要もないという意味では、今回ご紹介する中で最も金銭的負担の少ない方法です。
ただ、一般的な方法ではないため、葬儀社や火葬場に相談しても許可が得られない場合が多々あります。
そのことを理解した上で、なるべく早めに希望してみましょう。
近隣の寺院や霊園に相談し永代供養してもらう
送骨や散骨は、事業者に遺骨を郵送する手間と費用がかかります。
なるべく自分の負担を減らしたいと考えるなら、永代供養を行っている近隣の寺院を探してみてはいかがでしょうか。
郵送ではなく、自分の手で骨壺を埋葬場所へ運ぶ方法です。
「永代供養」「宗教・宗派不問」といった文言が看板に掲げられていて、合同で埋葬してもらえる大きな永代供養墓があるお寺が近所にあったら、供養の費用について相談してみましょう。
数万円で供養してもらえるようであれば、送骨先や散骨先を探すよりも、負担なく遺骨を手放せます。
合祀型納骨堂
納骨堂とは、たくさんの遺骨が納骨されている屋内施設です。
個別にスペースを設けている納骨堂は費用が高いですが、大きな1つの納骨堂にたくさんの人の遺骨を埋葬する合祀型納骨堂であれば、費用はぐっと抑えられます。
近隣の納骨堂施設に、合祀型納骨堂が設置されていないかどうか調べてみましょう。
合祀型納骨堂の費用
合祀型納骨堂の費用相場は、5万円~30万円程度です。
合祀型納骨堂の注意点
送骨同様、骨壺から遺骨を取り出して他の人の遺骨と一緒に埋葬されるため、後で個別に遺骨を取り出すことはできません。
合祀型樹木葬
樹木葬とは、墓石ではなく樹木を墓標として、樹木のそばに遺骨を埋葬するお墓です。
一本の大きな木をシンボルツリーとして周りに納骨するタイプが主流ですが、個別にスペースを設けて1本の木を独占するタイプもあり、また大きな納骨スペースを作ってたくさんの遺骨をまとめて納骨する合祀型もあります。
樹木葬の中では、合祀型が最も費用を抑えられる形式です。
近隣に樹木葬霊園がある人は、合祀型の樹木葬を扱っているかどうか、調べてみましょう。
合祀型樹木葬の費用
合祀型樹木葬の費用相場は、5万円~20万円程度です。
合祀型樹木葬の注意点
合祀型納骨堂と同様、後で個別に遺骨を取り出すことはできません。
なお、契約時には埋葬費用以外の費用が発生しないかどうか、しっかり確認しましょう。
プレートに名前を刻むための彫刻代などが別途必要な場合もあります。
遺骨がたくさんある場合は依頼するお寺や霊園に費用を相談しよう
なかには、古いお墓から取り出された先祖の遺骨を引き取るなどして、複数の遺骨の処分に困っている方もいるでしょう。
送骨、委託散骨、合祀型といった供養法において、費用は「一体あたり」の金額です。
いくら費用が抑えられるといっても、遺骨がたくさんある場合はかなりの出費になってしまいます。
もし遺骨が複数あって困っているなら、依頼を検討しているお寺や霊園、散骨事業者に相談してみましょう。
「一体あたりではなく、骨壺1つあたりでよい」と返答してくれるところがあります。
複数の遺骨をまとめることで骨壺の数を減らせれば、費用負担が減ります。
骨壺の中の遺骨は、年数が経つにつれて水分が失われ、かさが減ってきます。
骨壺が複数あって困っている人は、まずは骨壺を開けてみるのがおすすめです。

この記事を書いた人
奥山 晶子
葬儀社への勤務経験、散骨を推進するNPO「葬送の自由をすすめる会」の理事の経験、遺品整理関係の著書・サイト制作サポートなどから、終活全般に強いライター。ファイナンシャルプランナー(2級)。終活関連の著書3冊、監修本1冊。最近の著書は「ゆる終活のための親にかけたい55の言葉」オークラ出版。ほか週刊現代WEBなどサイトへの終活関連コラム寄稿、クロワッサン別冊「終活読本」の監修や、令和6年5月発刊「ESSE」6月号のお墓特集を監修している。