真言宗とは?弘法大師空海、真言密教の教え、葬儀や仏事マナーを詳しく解説

更新:2023.06.29

真言宗は、814年に弘法大師空海が開いた日本仏教の一宗派です。

日本仏教史の中でも燦然と輝く功績を残した弘法大師空海の人気と、護摩祈祷など呪術的な儀式を通じて現世利益に応えてくれることなどから、いまでもたくさんの方が信仰しています。

この記事では、真言宗がどのような宗派なのか、空海の生涯と功績、真言密教の教え、さらには真言宗の葬儀や仏事について、分かりやすく解説いたします。

真言宗の概要

まずは、真言宗がどのような宗派なのか、基本的な概要を押さえておきましょう。

真言宗の諸派と本山

高野山真言宗 総本山 金剛峯寺

現在、真言宗は約50の宗派に分かれています。

そのうちの主要な16派、18の本山をご紹介いたします。これらは、真言宗各派総大本山会(各山会)に加盟し、「真言宗十八本山」と呼ばれています。

▶古義真言宗系

空海の流れを汲む諸派。

東寺真言宗教王護国寺(京都市南区)
高野山真言宗金剛峯寺(和歌山県高野町)
真言宗善通寺派総本山善通寺(香川県善通寺市)大本山随心院(京都市山科区)
真言宗醍醐派醍醐寺(京都市伏見区)
真言宗御室派仁和寺(京都市右京区)
真言宗大覚寺派大覚寺(京都市右京区)
真言宗泉涌寺派泉涌寺(京都市東山区)
真言宗山階派勧修寺(京都市山科区)
信貴山真言宗朝護孫子寺(奈良県平郡町)
真言宗中山寺派中山寺(兵庫県宝塚市)
真言三宝宗清荒神清澄寺(兵庫県宝塚市)
真言宗須磨寺派須磨寺(神戸市須磨区)

▶新義真言宗

中興の祖である覚鑁の流れを汲む。

真言宗智山派智積院(京都市東山区)
真言宗豊山派長谷寺(奈良県桜井市)
新義真言宗根来寺(和歌山県岩出市)

▶真言律宗

西大寺の叡尊を中興の祖とする。

真言律宗総本山西大寺(奈良県奈良市)大本山宝山寺(奈良県生駒市)

ご本尊は大日如来

真言宗では、大日如来をご本尊として祀ります。

大日如来は、宇宙のあらゆる万物の根源で、この世のすべての事柄は、大日如来さまの教えの表れだとされています。

真言宗の寺院は日本全国に見られ、お寺によってさまざまな仏さま(阿弥陀如来、薬師如来、観世音菩薩など)が本尊として祀られていますが、こうした諸仏もすべて大日如来の姿を別の方に変えたものと考えられています。

神道における太陽を神格化した天照大神も、大日如来の化身だとされています。

即身成仏と三密加持

真言密教では、どんな人間の中にも仏になれる素質があり(仏性)、だれもが修行をすれば、生きながらに仏になれるものと説いています(即身成仏)。

仏になるためには、身(姿やかたち)、口(口から発せられる言葉)、意(意識や精神)の3つを整えなければならず、これが「三密加持」です。

そして三密加持のために用いられるのが「印」や「真言」です。三密加持とは、次のように考えて実践します。

●身密

自身の身体を仏にする。手に「印」を結び、さまざまな諸仏を表す。

●口密

仏の真理の言葉である「真言」を称える。

●意密

意識や精神を仏の境地に置く。

弘法大師空海の生涯と功績

真言宗を開いたのは弘法大師空海です。

いまでも絶大な人気と信仰を集める空海の生涯と功績についてご紹介いたします。

なお、空海とは僧侶としての名前、弘法大師とは、空海が亡くなったあと、921年に醍醐天皇より贈られた諡号(天皇から高僧に送られる名前)です。

空海の生涯

空海は、774年に現在の香川県多度津町の地域の有力者であった佐伯家に生まれました。

幼名は佐伯真魚(さえきまお)。子供の頃から利発で神童だったと言われており、両親は早くから真魚を中央の官人にしたいと考えていました。

15歳で京都に上り、18歳で大学入学。当時の地方の豪族が歩む道としては考えられないエリートコースだったそうです。

しかし、出世主義が横行する大学に嫌気が差した空海は大学を中退。なんとそこから仏道を選び、どこかのお寺に所属するのではなく、日本中の山林を駆け巡り、山岳修行の日々を送ります。

特に24歳から31歳の間に何をしていたかはあまり詳しく知られていませんが、しこの時期に数々の修行を積み、経典を読み、言語を習得し、人脈を広げていったものと考えられています。

空海は第18次遣唐使(804)として唐に渡ります。

この18次遣唐使に、のちの終生のライバルとなる最澄(天台宗の開祖)も名を連ねていたことは有名な話です。

エリートの最澄に対し、成り上がりの空海。しかし唐から持ち帰ってきた功績は最澄にも劣らないものでした。

真言密教の正当後継者である恵果阿闍梨(けいか)は、日本からやってきた空海を次の後継者にするために「伝法灌頂」と呼ばれる儀式を執り行います。

そして、その教えを携えてすぐに帰国して、日本に広めることを促したのです。

天台教学を学んだ最澄に対し、当時中国で最先端を走っていた真言密教を持ち帰った空海。

平安仏教の2大スターであり、日本仏教の礎を築いた両者ですが、徐々に立場は逆転し、年下で在野出身の空海が頭角を表し始めます。

真言密教に関しては最澄が空海に弟子入りするまでに至るのです。

その後空海は、朝廷からの厚い信頼を得て、教王護国寺(東寺)や高野山などを開くだけでなく、教育、貧民救済、治水事業などの社会福祉事業をも手がけていきます。

835年3月21日、高野山の地で息を引き取りますが、空海の死は「入定」と呼ばれ、いまも変わらず修行を続けているのだと信じられ、没後1200年近くになる今もなお、多くの人が空海を拝みに、高野山に足を運んでいるのです。

空海の功績

僧侶として群を抜く活躍をした空海ですが、その功績は他の領域にも及びます。

●鉱山技術

山岳修行を通じて、主に西日本の山々を知り尽くしたと言われている空海。

鉱山開発や製鉄などにも精通した技術者ではなかったのかと言われています。

空海ゆかりの寺院の多くは、鉄鉱石の産出地と重なり、空海が発見したといわれる温泉が日本各地にあるのも何かしらの関係があるのかも知れません。

●言語と書道

空海は三筆と呼ばれる程の書道の達人。また中国語を駆使したおかげで唐の地で活躍できたとも言われています。

「いろはにほへと」で始まる『いろは歌』も空海作と言われています。

●土木工事・治水事業

当時の社会は、川や池の氾濫に頭を悩ませていた中、空海は土木の面でもその才能を発揮します。

自身の故郷である讃岐国(香川県)の満濃池の改修、大和国(奈良県)の益田池の改修工事や、摂津(大阪府)大輪田の船頼所などが有名です。

●教育

当時は庶民に向けた教育の場がなかった中、空海は綜芸種智院(しゅげいしゅちいん)を設立。

貴族や有力者の家のものでなくても、教育を受けられるよう取り組みました。現在の種智院大学の前身となります。

●お遍路さん

四国八十八箇所巡礼、通称「四国遍路」は、約1200年かけていまも行われている巡礼の旅のことです。

空海ゆかりの88の寺院を巡り、いまでも年間の10万人から30万人もの人が、四国の地に足を踏み入れて、空海の足跡を歩んでいるのです。

真言宗の葬儀

真言宗の葬儀は、故人を大日如来の密厳浄土に送り出すために行われます。通夜や葬儀では『般若心経』『般若理趣経』の他に、諸仏のご真言を唱えられます。

●授戒と引導

故人を仏弟子にするために、出家者が守るべき戒を授けます(授戒)。

この時に与えられる名前が「戒名」です。そして「引導」と呼ばれる儀式を執り行い、故人を仏さまの世界に導くのです。

●焼香

真言宗の焼香は3回です。これは、身・口・意を整える「三密」を大切にしていることに由来します。

お線香も同様に3本立てます。

真言宗の仏壇・仏具

次に真言宗の仏壇や仏具について見ていきましょう。

本尊

真言宗のご本尊は大日如来です。そして向かって右に弘法大師空海、向かって左に不動明王をお祀りします。

仏壇

真言宗の仏壇は、紫檀や黒檀などの銘木を用いた「唐木仏壇」が一般的です。

最近では、マンションやモダンな住宅にあわせた「家具調仏壇」を選び、仏具を真言宗専用のもので整えるケースが増えています。

位牌

真言宗の戒名は、梵字の「ア」が頭に刻印されるのが特徴です。この1字が大日如来を表します。その下に、院号・道号・法号・位号が連なります。

(男性)ア ◇◇院 ◆◆ △△ 居士(信士)

(女性)ア ◇◇院 ◆◆ △△ 大姉(信女)

数珠

真言宗の数珠は主玉を108個連ねたものが一般的です。

108それぞれに、金剛界の諸仏が込められていると考えられ、真言を唱える際に数を数えるために用います。

真言宗の家族葬は、広島自宅葬儀社にご相談下さい。

この記事では、真言宗の教え、空海の生涯、そして真言宗の葬儀や仏事について解説いたしました。

真言宗の葬儀や仏事で分からないことがありましたら、どうぞ、広島自宅葬儀社にご相談下さい。

どんなささいなことでも構いません。お客様の声に耳を傾け、親切丁寧に、アドバイスさせていただきます。

この記事を書いた人

廣田 篤  広島自宅葬儀社 代表

葬儀業界23年、広島自宅葬儀社代表。厚生労働省認定技能審査1級葬祭ディレクター。終活カウンセラー。前職大手葬儀社では担当者として 1500 件、責任者として1万件以上の葬儀に携わる。実母の在宅介護をきっかけに広島自宅葬儀社を立ち上げて現在に至る。広島市内だけでなく瀬戸内海に浮かぶ島々から、山間部の世羅町、神石高原町まで広島県内あらゆる地域の葬儀事情に精通する広島の葬儀のプロ。身内の死や介護の経験、数々の葬儀を通じての縁から「死」について考え、文章にすることをライフワークとしている。

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