ずっと家に帰りたいと言っていた家族へ、自宅葬という選択肢

更新:2022.07.07

ずっと家に帰りたいと言っていた。

これまで自宅葬のお手伝いをさせていただいてきた筆者が、振り返ってみたところ、自宅で葬儀を行った方の多くが「本人が生前にずっと家に帰りたいと言っていた」とおっしゃってました。

この記事は、現在ご家族に入院中の方、施設にいらっしゃる方がいるという方へ、将来もしもの時のことを考える時に、自宅葬という選択肢も、一つ加えてみるのもいかがでしょうかというご提案です。

ご家族様の参考になれば幸いでございます。

自宅で最期を迎えたいと望む方は、半数以上

広島県に在住の6割の方が、人生の最期を自宅で迎えたいと考えているというデータが出ています。(平成28年広島市市民意識調査)全国的にも厚生労働省の調査によると54.6%の方が自宅で最期を迎えたいとなっています。

半数以上の方が、自宅を希望されています。

実際は、施設で最後を迎える方が多い

一方、実際にどこでお亡くなりになっているのかを見てみると、自宅でお亡くなりになったケースは、広島県では僅か14.8%、全国的には12.%に留まっています。

理想と現実の差があまりにも大きいことがわかります。

亡くなる場所の変化

かつての日本人は、8割の方が自宅で最期を迎えていましたが、1980年頃から施設で最期を迎える方のほうが多くなっていきました。

現代の核家族化や生活環境の変化も一因にあるでしょう、同居世帯も少なくなり、本人が周囲に迷惑をかけたくないと施設を選ぶ場合も考えられます。

2022年現在の日本は、超高齢化社会で全員が施設で亡くなるということは、自然と困難になっており、一時期よりも病院で亡くなるというケースが減少傾向にあります。

自宅で最期を迎えたいと願う方々の思いを少しでも叶えるために、多様な選択肢を増やすことは、医療体制の維持にも繋がると、国が推進しています。

「家に帰りたい」が叶わなかった方へ自宅葬という選択肢

自宅で最期を迎えたいと願う方が約6割にも関わらず、多くの方が自宅以外で最期を迎えていることで、周囲の家族にももっと何か出来なかったのか、他に選択肢はなかったのか、振り返ることもあったと思います。

生前に家に帰らせてあげることは出来なかった無念さ、色んな感情を抱えながら、せめて最期だけでも・・・。

亡くなった後、家に連れて帰ってあげるご家族をこれまで多く見てきました。

「やっと家に着いたよ、よかったね」「ずっと帰りたいと言っていた家だよ」

故人へ声をかける家族の姿があります。

そのまま自宅で出棺までの時間を故人と過ごす家族。

荼毘に伏されるまでの残された限られた時間を、まだ生きているかのように接する家族の姿を何度も目にしてきました。

自宅で葬儀を行う、自宅葬というスタイルです。

ずっと家に帰りたいと願っていた故人にとって、自宅で家族と過ごせるというのは居心地の良い時間になっていたと感じました。

念願の我が家に帰って自宅葬で得られるもの

生前に自宅へ帰ることは出来なかったけれども、ようやく念願の我が家へ帰ることが出来た故人とようやく家に連れて帰ってあげられたと安堵する家族。

家に連れて帰ってあげることが出来なかったという自責の念は軽減され、故人の為にしてあげられたという満足感が家族にありました。

たとえ言葉を発することは出来なくても、目の前にはいつもと変わらない姿で安らかに眠っている故人がいる。

してあげたいことは返事がなくても、家族は自由にできます。

住み慣れた家の中で、いつもの布団。好きな食べ物を用意したり、思い出話を語ったり、

これまで施設にいる時には出来なかったことがたくさん出来るので、これまでの時間を埋める、かけがけのない時間にもなるのです。

実際に自宅葬をやってみた方の声

家に帰りたいと言っていた本人の希望を叶えるために、実際に自宅で葬儀を行った方の声をご紹介させていただきます。

「父は生前ずっと家に帰りたいと言っていたから、今回どうしても家に連れて帰ってあげたかった。父のために葬儀も家で行いたかったので希望が叶ってよかった。

家でやるのは大変かなと思ったけれども、そんなこともなく、家でゆっくり故人と最期を過ごすことが出来て本当に良かった。」

「母は家に帰るのを目標にしていた。それも叶わず施設で最期を迎えることになりそうなのがわかった時、残念そうな母の表情は忘れられません。葬儀にはなりましたが、家で最期を過ごさせてあげられたのは、良かったなと思っています。」

自宅で葬儀をする前に確認したいこと

自宅で葬儀を行おうと考えた時、確認しておきたい点をお伝えさせていただきます。

自分の家でできるかどうか、考えてみる時にお役立てください。

予想参列者数

自宅の規模によりますが、自宅で葬儀を行う場合、家族葬など小規模な葬儀が適しています。どのくらいの参列者数になるのか、一度算出してみるとよいでしょう。

葬儀を行う部屋

葬儀を行う場所は、和室でも洋室リビングでも構いません。どこで行うか、見当がつかない場合は、葬儀社へ事前に相談してみるのが良いです。

また、その空間にどのくらいの人数が入れるのか、算出してみることをおすすめします。

・想定する部屋に参列者が入れるかどうか

想定する部屋に想定する人数が入れるかどうか、見当してみることが重要です。

自宅葬の昔と今

自宅葬の昔と今の違いをご紹介させていただきます。

従来の自宅葬

従来の自宅葬では、家の中には親族が入り、近所や会社関係の方々は、家の外というのが普通でした。一般参列者は外に用意された受付へ香典を出し、外で焼香を済ませるという形でした。

今の自宅葬

家族や近い親族だけで自宅で家族葬を行う方々が増えています。白黒の幕を家の中に張ったり、大きな祭壇を仏間に設置したりということもなく、省スペースで小規模な葬儀というのが主流です。

まとめ

ずっと家に帰りたいと願っていた方へ、自宅葬という選択肢が家族にとって慰めの一つになることもあるということがこの記事でお伝えしたかったことです。

生前に家に帰ることが叶わなかったとしても、たとえ臨終後に我が家へ帰宅となったとしても、ご本人にとっては待望の時間になるのではないでしょうか。

自宅に帰った際、家族の声は、きっとご本人にも聞こえているはずですから。

家族に対してありがとうとおっしゃっていることでしょう。

この記事を書いた人

廣田 篤  広島自宅葬儀社 代表

葬儀業界23年、広島自宅葬儀社代表。厚生労働省認定技能審査1級葬祭ディレクター。終活カウンセラー。前職大手葬儀社では担当者として 1500 件、責任者として1万件以上の葬儀に携わる。実母の在宅介護をきっかけに広島自宅葬儀社を立ち上げて現在に至る。広島市内だけでなく瀬戸内海に浮かぶ島々から、山間部の世羅町、神石高原町まで広島県内あらゆる地域の葬儀事情に精通する広島の葬儀のプロ。身内の死や介護の経験、数々の葬儀を通じての縁から「死」について考え、文章にすることをライフワークとしている。

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